【民法】(準)委任契約と請負契約の違い
こんにちは。TROWAです。
今回は、準委任契約と請負契約の違いについてみていこうと思います。
以前、とある弁護士の先生から、「(準)委任契約と請負契約の違いは何か」、「受託者側にとって、準委任契約と請負契約のどちらが有利か」と問われ、恥ずかしながら答えることができなかったんですよね
なかなか凹んだので、今回はその辺をみていこうと思います。
1.条文と要件事実
まずは、条文から
請負(民法(以下、題名省略)632条)
「請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。」
委任(643条)
「委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。」
※民法656条より、準委任には委任の条文が準用される
条文だけじゃ分かりにくいので、少し分解します
・請負契約
→具体的内容としては、「仕事の内容」と「報酬金額」を特定する必要がある
・準委任契約
→一方当事者が、法律行為以外の事務を相手方に委託することを内容とする
原則、無償契約で、報酬は特約により定める(648条1項)
2.類似点・相違点
改正民法において、準委任契約には2つの類型があることが明文化された。
2つの類型とは、①作業量など履行の割合に応じて報酬を支払う履行割合型(648条)と、②事務処理の結果によりもたらされる成果に対して報酬を支払う成果完成型(648条の2)である
以上を前提として、請負契約と準委任契約の類似点・相違点をみていく
(1)類似点
成果完成型準委任においては、報酬は、成果の引き渡しと同時に支払うものとされている(648条の2第1項)
また、成果物を引き渡すことができなかったときは、委託者は報酬の支払いを拒むことができる。
この点で、成果完成型準委任は仕事の完成を約し(632条)、仕事の目的物の引き渡しと引き換えに報酬を支払うこととされている請負(633条)と類似している
また、請負において仕事が完成しなかった場合、中途の結果によって注文者が利益を受けるときは、その割合に応じて請負人は報酬を受けうることが明文化された(634条)
そして、成果完成型準委任においても、請負のこの条文が準用されることとなった(648条の2第2項)
なお、履行割合型準委任においても履行割合に応じた報酬請求権が認められている(648条3項)
この点においても類似している
また、請負において引き渡したものが契約の内容に適合したものでなかった場合、契約不適合責任を負うことになる。
そして、準委任契約も有償契約であるため、契約不適合責任を負うと解する余地がある(559条)
さらに、受託者は、民法の一般原則に従った債務不履行責任を負うため、この点でも、請負と成果型準委任には実質的な違いがないといえる。
(2)相違点
請負人の契約不適合責任については、消滅時効の主観的起算点につき特則があり、注文者が不具合を知ったときから1年以内にその旨を通知しないと契約不適合責任を追及できない(637条1項)
一方で、準委任では、債権の消滅時効の規定にしたがい、受任者に対する通知の有無にかかわらず、委任者が不具合を知り、かつその原因が受任者にあることを知ったときから5年間責任を追及することができる(166条1項)
…結局、相違点はこのくらいしかないのだろうか。
民法改正により、請負と準委任には、それほど差がなくなったように感じる
とある行政書士事務所のHPに、「準委任契約にしておけば、受託者は完成義務を負わないから責任が軽くなる」的な趣旨の記載があったが、準委任契約にも民法の一般原則による債務不履行責任を負うことからすれば、準委任契約の方が責任が軽いと考えるのは誤りなのではないだろうか。
うーん…冒頭に記したように、弁護士の方に聞かれたということを考えれば、もう少し明確な違いがあるんじゃないかとも思うんだが…いまいちリサーチできなかった感がある
どなたか、ご教示いただけるようであれば、コメントいただければ幸いです。
また何かあれば追記します
では。
<参照>
・上山浩、若松牧「準委任契約の誤解を解きほぐすーシステム開発契約を題材にー」知財管理Vol.70 No.5(日本知的財産協会、2020)627-638頁
(結構引用してしまいました…マズかったら記事削除するんで、ご指摘ください)